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2025.05.14
インドゾウの「ボン」と「ヨーコ」
—金沢動物園で紡ぐ40年の物語—(2025年5月16日号金沢版)

金沢動物園には、長年にわたり多くの来園者に親しまれている2頭のインドゾウがいる。名前は「ボン」と「ヨーコ」。2頭は1985年、ボンベイ市(現ムンバイ市)と横浜市の姉妹都市提携20周年を記念して、インドから迎えられた。それから40年間、2頭で寄り添いながら、訪れる人々に温かな感動を与え続けている。
インドゾウの飼育員・安藤正人さんに話を聞いた。「象の飼育には、大きな労力が必要です。エサや排せつ物、敷材などの量は膨大で、日々の掃除や準備は重労働です。そんな中でも、トレーニングを通してボンとヨーコが合図を覚え、爪切りや採血に協力する姿を見たときには、大きな喜びがあります。また、ゾウは体が大きく、万が一事故が発生すると大事に至る可能性が高いため、飼育においては安全を最優先に考えています」と話す。そして、長生きの秘訣については「巨体を支える足を痛めないよう、毎日の手入れや床材の工夫にも細心の注意を払っています。こうした地道な努力の積み重ねが、2頭の健康を長年にわたり支えてきたと考えています」と話す。
現在、金沢動物園ではボンとヨーコの来園40周年を記念し、写真展を開催している。2頭がインドから横浜にやってきた当時の写真も展示されており、その中の式典に参加していたインドの方の孫が、96歳になる祖父の願いを受けて先日動物園を訪れたという。祖父は、2頭が今も横浜で元気に暮らしている姿にとても感動していたそうだ。また40年前の金沢動物園を知る職員によると、当時インドから来た関係者は、ボンとヨーコとともに船に乗って来日し、日本の環境に慣れるまでの約半年間、心を込めて飼育にあたっていたという。
器用に竹を食べる姿、日本一長いボンの立派な牙、そして互いに寄り添う穏やかな2頭の様子は、来園者の心に温かい余韻を残すに違いない。ぜひ金沢動物園を訪れ、この40年間を歩んだボンとヨーコの物語に触れてほしい。
■「ボン」「ヨーコ」来園40周年写真展
開催日:2026年3月29日(日)まで
場所:インドゾウ舎(寝室側)前/雨天でも観覧可能